17.7.13 「ブラック季節講習」に要注意
今年も夏休みがもうすぐやってくる。
この時期、季節講習は受けた方がいいの?or他の塾はどうなんだろう…?と考えている保護者が多いと思う。
今年は例年以上に多くの大手個別指導塾がCMを打っている。
(かき氷とか蟹工場と例の如くふざけてるのもあるが(笑))
場所によっては、ポスティングや折込チラシを目にしている人も居るだろう。
では、季節講習とはなんぞやというのを、
現場サイドの話を含めながら幾つか挙げていこうと思う。
勿論、様々な要素が絡むので、あくまでも「一つの意見」として解釈して欲しい。
1:何をやったらいいの?
テストで低迷している(平均点-10点以上、小学生なら60点以下とか)科目を見てもらうと良い。
特に中1の場合、1学期or前期のテストはぶっちゃけ「小6の焼き直し」レベルなので、
どの学校でも平均点が非常に高くなる。
ぶっちゃけ、英語なんてアルファベット書けたら余裕で90点取れるし。
その中で得点が低迷している科目がある場合は、「小学の知識定着が危うい」可能性が濃厚。
当然の話だが、中学校は「小学校の内容が分かっている事」を前提としているので、
小学範囲の復習までやっていたら、それでこそ過労死寸前の先生達がマジで死屍累々になってしまう。
故に、放っておくと虫歯の如く悪化していき、通知表が地を這う事になるので、
(営業抜きにしても)早めに処置した方が断然いいのだ。
クリスマス前に「数学が0点寸前を低空飛行している」と親が半泣きで相談しに来た中3を見たら、
「実は九九も分数も分かってなかった」という、末期症状に遭遇した事なんて幾度もあった。
<受験が絡まない公立中1・2の場合>
普段受けている科目とは異なる科目を見てもらうと良いだろう。
「天の神様の言う通りなのなのな」状態で迷っているなら、理科社会がオススメかな。
というか、定期試験で30点前後で低迷している科目があるならやった方がいい。
学年・セメスター(学期)が進むほど、内容が難しくなってくるので、
学年上位を狙うのも困難になってくるし。
理社はぶっちゃけ「暗記ゲー」だが、何気なく学年でリンクしており、
基礎事項を知らないままだと、上級学年の内容も同じく入らない「ドミノ倒し」状態になる。
理科を例にすれば、中2前半の「原子」が分からなければ、
中3冒頭の「イオン」なんて到底理解できない。
中1冒頭の「光合成」が分からなければ、中3終盤の「食物連鎖」も「あみだくじ」だ。
社会も同じく、小6の歴史が分からなければ、中1・2の歴史も、高校日本史も分かる筈がない。
中2中盤の中世・近代ヨーロッパの基礎事項を知らなければ、
中3公民冒頭の「基本的人権」で同じ事が再出現するので二度手間になる。
また、「覚える習慣」を早めに習得させる事も、今後の人生に於いて大切であろう。
3歩歩いたら忘れるような「ニワトリ頭」では社会人やってられないし。
若しくは、普段見てもらっている科目でも、
特段出来ない場所を潰してもらうのもよいだろう。
(主に数学の文章問題やら図形・数式証明の事だけど)
現場サイドとしても、学校以上に短い時間で
学校に並行or先行して塾の教材を進める必要があるので、
極端に苦手な単元を潰すまでの時間を割く余裕がないのだ(例外はあるが)。
私の場合は、学校よりも半月以上先の内容をやるように授業を設計し、
十分余裕を持って苦手対策に時間を割いていたので、
この商法が使えなかったんだけど(泣)。
<中学受験を考えない、公立小学生の場合>
国語を推したい。言い方が悪いが、所謂「ゆとり」以降の子ども達は
「語彙不足に伴う理解力欠如」(=言葉を知らないから分からない)が非常に深刻。
今の新卒世代も同様、語彙不足で業務日報や保護者向けの案内文書が
日本語になっていないという事も多いので、行く先を案じている。
ゆとり世代が愈々「親」になってきているから尚更深刻なのだ。
現場でも「問題文の日本語が分からないから解けない」という小・中学生が年々増えていた。
「電子・web辞書に慣れてしまって書籍辞書が引けない高校生」なんてのもザラだった。
「グローバル化よりも母国語の語彙確保が喫緊の課題だ」と、
現場サイドというか親世代として危惧している次第だ。
そんな状態で算数や理社をやらせても、結局言葉の意味を教える事に終始して、
授業にならん事もあるわけだ。
その他、小学生で興味があるなら、英語を予習させるのもありだ。
英語を通じて「言葉に興味を持ってもらう」のも有効。
<受験生の場合>
親が外国人だから英語は家で日頃使ってるなど、
ダントツな得意科目があるというケースを除けば、受験科目を全て網羅すべきである。
中学受験の場合は、4科・2科と選択できるが、そこは希望の受験形態次第だ。
(受験回数が増えるので4科受験を推すけどね)
どんな内容をやるかというのは、大半の場合は塾側の提案に依存するが、
教育熱心な世帯であれば家族会議で決めて、塾側と擦り合わせるという手法でもいい。
基本的には、総復習(7月〜8月上旬)→確認(盆前後)
→受験orテスト対策(盆明け〜8月下旬)→模試or前期期末(8月末〜9月前半)という流れになる。
*2期制の場合、夏休みが終わると、速攻前期期末テストになり、一気に現実に引き戻される。
経済的・時間的事情で「やらない」選択肢もあるが、
周囲の同級生の大半が季節講習を受けるので、
休み明けに学力的な意味で「置き去り」にされるリスクがある。
(芸人じゃなくて童話の「アリとキリギリス」を考えれば分かりやすいだろう)
実際に、ほぼ同じ学力・同じ志望校で、季節講習を受けたか否かで、
模試偏差値が10も差が付き、そのまま合否に繋がった事もあった。
だからといって、季節講習を受けなかったらゲームオーバーというわけでもない。
受けない選択肢を選ぶ場合は、
「全学年・全科目の総復習、受験問題の類題演習、過去問・模試挑戦といった内容を
全て一人で完結させられるか?」という問いに、
先述したリスクを覚悟の上でイエスと返答できるかどうかだ。
実際、私の職場でも「親としても受けさせたい気持はあるのだが、
母子家庭で経済的に厳しくて…」という世帯は毎年何件も見てきた。
それでも、塾の自習室に毎日通い詰めて、学校の宿題や塾の教材を自力で進め、
時に私やバイト講師に相談を持ちかけて、無事志望校合格に至っている。
*ここで履き違えないで貰いたいのは、あくまでも「自習」であるという点だ。
諸々の優先度が受講者よりも下がってしまう(数十分ほど放置プレーになってしまう等)事は、
お金払って受講してもらってる生徒との「公平を期す」為にも、ある程度了承していただきたい。
…流石に「1時間以上も放置される」とかであれば、配慮不足としてご意見してもいいけど、
現場としても、割ける人手に限界があるのも実情なのだ。
<余談:高1・2の場合>
私の職場では、経済事情で大学や専門学校に行けず、高卒就職を希望する世帯が多かった。
高卒就職でも就職試験を課す企業は多い。
所謂「SPI」等、高校レベルの数学知識を要求する適性試験もあるので、
数IAに自信がなければおさらいしておくと良いだろう。
塾側が対応できるのなら、苦手科目をおさらいするのも良いだろう。
(それなら大手予備校行った方がいいんだけどね…)
2:どの位受講したらいいの?
幼児にパフェを出した所で食べ切れないのが明白なように、物事には裏と表…違う、適した分量がある。
事情により様々だが、大体こんな感じだと思ってもらえると良い。金額はあくまで参考程度。
【受験しない学年or忙しい高1・2】
6〜10コマ(受講料1〜2万円くらい)→1週間に通う回数が休み中だけ1〜2回増える(主に小学生)
11〜20コマ(受講料3〜4万円くらい)→1週間に通う回数が休み中だけ2〜3回増える(主に中1・2)
【中3・小6の受験生or中学受験予定の小4・5】
21〜30コマ(受講料5〜8万円くらい)→週3・4くらい、1日に2コマくらい受ける事も
31〜40コマ(受講料9〜11万円くらい)→週4・5くらい、1日2〜3コマ受ける
【高3or偏差値35以下など相当ヤバい学力or上位進学校志望の場合】
41〜50コマ(受講料12〜14万円くらい)→週5・6、1日3〜4コマ受ける、部活のようなノリになる
51〜60コマ(受講料15〜17万円くらい)→週6・7、1日5〜6コマを受け、日夜塾に常駐して勉強漬け
また、受けるのは親ではなく本人なので、
力士の高安のように、途中で音を上げて逃亡する事が無いよう(汗)、
本人の覚悟を決めさせる事も重要である。
3:どうやって受けるの?
至ってシンプルである。
【新規の場合】
塾か本部に電話する→担当者と面談&体験授業受ける
→申込書貰う→申込書出す&お金払う→受講開始&教材来る
【既に塾に通っている場合】
塾から面談案内が来る(GW明け〜6月初旬)→面談する(6月〜7月上旬)
→申込書貰う→出す&お金払う(終業式前)→教材来る→受講開始
*別ページにも書いているが、季節講習の受講料は基本的に「銀行振込」である。
10万円を超える場合はATMで対応できないので、窓口で対応してもらおう。
ちなみに、新規顧客の場合は、
受講が終わると「そのまま9月以降も通わなイカ?」と入会勧誘される。
その際、入会金無料(1万円程安くなる)等、
諸経費がちょっと安くなる特典も付いている。
(現場としても、顧客確保or奪い合いが至上命題なので、
必死の引き留めにかかるのがオペレーションになっている。
故に、顧客は増えたが彼女にはフラれた社員も居た(笑)。)
余程酷い塾じゃなければ、休みが終わる頃には
本人が通い慣れてしまっているので、そのまま継続=入会という流れになるんだけどね。
4:こんな講習に要注意
私は個別指導塾に10年以上身を置いていたわけだが、
「これはないな」と思った季節講習も数多と見てきたし、
業務命令で提案せざるを得ない事もあった。
納涼とは行かないが、背筋が凍るような話も書いておこう。
【その1:塾内が動物園状態】
受験学年は基本的に塾に入り浸る事になるのだが、
その受験生達がどったんばったん大騒ぎなんて事はよくある。
日頃「やかましい」という悪評が立っているようなら他で受けた方が良い。
小学生が多い場合は、ちょっと大目に見てほしい所もあるけど…。
【その2:面談でコマ数しか提案されない・脅し文句しか聞こえない】
私の元上司だが、私の受け持ちの生徒の親に対して、
「お宅のお子さんは偏差値30なので50コマの14万円です」で面談即終了。
「その50コマは何の科目をどう割り振って、どんな内容をするんですか?」と聞いたら
「そんなのあんたが決める事でしょ」と逆ギレされた。
確かに、何十人と居る生徒個々人に対して、オーダーメイドで講習内容を設計するのは、
相当早くから準備しない限り、オーバーワークが常態化している以上、
現場としてもほぼ不可能な話である。
(故に3月から夏期講習の準備をしている社員も居たくらいだ)
「アンタ死ぬわよ」と脅された保護者の感情に漬け込んで、
論拠も根拠も無い高額商品を売りつけるのは、(結果論をさておき)詐欺同然である。
内訳や詳細が示されないままに、コマ数や金額だけを提示してくる塾は、
子どもではなく収益しか見ていないので絶対止めたほうがいい。
ちなみに、この女上司は6月で解雇されたらしい。
【その3:結局終わりきらなかった】
季節講習というのは、本部のルールとして「指定期日内で実施する事」と定められている。
その為、本部に許可を取らずに好き勝手に始めたり、延長したりする事はできないのだ。
沖縄でもないのに入学式前に「海の家始めました」とか、
シルバーウィークも終わってるのに「冷やし中華始めました」と
宣伝するわけには行かないのと同じだ。
実際にあった話だが、塾側が面談で提案した
「92コマ(約25万円相当)」を快諾したものの、
休み中に終わり切れず、余った講習の分は結局お詫びして返金、というケースがあった。
ちなみに、このケースが受講確定した際、社内上層部は大絶賛する一方で、
現場の人間達は「終わりきれないだろ、バカじゃねーの?」と哀れんだ。
先述したように、受講コマ数が40コマを超えてくると「合宿=入り浸り」状態になる。
この程度なら、普段の学校ぐらし(50分×6時間授業×週5日)とほぼ大差ないのだが、
50コマを越えると、1日6〜7時間連続で授業しないと終わりきらないのだ。
60コマを越えると、週6・7、朝から晩まで
食事以外の休みを取らずに授業しないと冗談抜きで終わりきらないのだ。
極端な例だが、本人の負担が大きすぎて、体調を崩して欠席というケースも実際にあった。
個々人の教育理念によって賛否両論あるとは思うが、
50コマを越える季節講習の提案を受けた場合は、
物理的に大丈夫なのか、本人・塾双方に十分確認した方がよい。
学力が相当やばくて、どうしてもこのくらいは必要という場合は、
1日でも早くスタートするように手配すべきである。
私の経験上、「1日3コマ(=3〜4時間)」が子どもの耐久限度である。
大学生が3限くらいまでしか持たないのと同様、
それ以上やった所で、右から入って左から抜けるので、本人の為にならないのだ。
【その4:実は水増しされている】
うちの系列ではないのだが、ある保護者から
「T●●●Sの夏期講習で90万円払ったのだが、
何も効果がなかったので冬期講習はこっちで」と零された事があった。
個人経営で無い限り、塾も「株式会社」なので、株主配当などの「大人の事情」が絡んでいる。
その為、上場している塾の場合は、1コマあたりの単価を高くして、
季節講習が20万円オーバーなんて事も多いようなのだ。
酷い会社の場合は「水増ししてでも高く売れ」という上層部の圧力がかかっている事も多い。
私の職場でも「最大より最適を売れ」と言いながら、
実際は「お前45コマで提案してるけど47コマにしろ、
それでこそお前はノルマ未達なんだから稼ぐ事にその頭使えよ」と上司からしょっちゅう怒られた。
ちなみに、この提案は重度発達障がい(ADHD)の生徒に対するものだった。
他の発達障がい(LD)の生徒に対して「それじゃ足りないだろもっとやらせろ」とも言われ、
発達障がいをダシに収益の水増しを強要されたのだった。
そもそも私に営業センスが無さ過ぎたのもあるのだが、
「1日何時間も拘束した所で効果が出るか?麺類とか煮込料理じゃないんだしさ」という、
疑念がずっと引っかかっていたのだ。
実際、音を上げる生徒に修造的闘魂注入で何とかやりきったが、
無味乾燥で長時間労働の過労だけが残った季節講習も幾度と無く経験した。
こうなると居た堪れない思いになる。
少々話は逸れたが、私の経験上「10万円以上、殊に15万円以上の提案」は注意した方がいいと思う。
どんなに塾を信頼していようと、間違ってもその場で契約するような愚行は止めた方が良い。
大人の事情で嫌々水増しされている可能性があるし、
本人が音を上げて授業が身に入らず、受講料ではなく滞在料になってしまう可能性を否定できないからだ。
・そんなにやって、本人がやり切れるのか
・受講する意義があるのか(この内容でどんな効果が得られるのか)
・ちゃんと約束を守ってくれるのか
といった事を十分に確認し、納得ずくの上で申込書を書いてもらいたい。
私の場合は、上から「その場で契約させろ」と圧をかけられていたが、
「生活保護寸前の世帯が多い地域なのに、6桁の買い物に易々とハンコ捺す親が居るか」と
真っ向から反発してワンテンポ置く様にしていた。
【その5:子どもが洗脳されている】
恐ろしい内容ではあるが、実はコレには現場側の事情がある。
塾も会社である以上、収益をあげなくてはならないのだが、
本部や会社で「受講率」が一つの管理指標(専門用語でKGIって言うんだけど)になっている為だ。
酷い企業の場合は、受講率が低いと罰則を課されることもある。
その受講率ってのは、受講した人数÷校舎の生徒数(%)で計算されるので、
小学生や高校生が多いとどうしても低迷する。
極端な話、「夏休みは算数やりたいってお母さんに言いなさい」と、
受講率向上の為に幼い小学生を洗脳している輩も事実いる。
(良し悪しはさておき、子どもを商品券で釣って、
紹介入塾の工作員に仕立てる、というグッドスピーカーもとい洗脳商法は、
普通の塾でもやっている(笑))
実際、中学受験をしない小学生に季節講習を受講してもらうよう、親を説得するのは骨が折れる。
「うちはまだいいですよ」と断られるのがオチだ。
テストで85点以上取れているのに「コレ100点だったら嬉しいよな?なっ?」と、
言葉巧みに誘導尋問を繰り返して、「うん」と答えたら、
それを言質に「お宅のお子さんが100点取りたいって言ってたので
ぜひやらせてください、金額はコレで」と親に提案するという、
強引過ぎる営業で収益を積んでいる輩もいる。
(俺の元上司の事だが、6月で解雇されたらしい)
自我形成が未熟な、小学生が主なターゲットになるのだが、
子どもが突拍子もなくあれやりたいこれやりたいと言い出したら、喜びの中に疑いを挟む方がよい。
しっかり理由や目的を聞いておいた方が良いだろう。
妙に論理的だとしたら、大人に騙されている可能性も否定できないからだ。
両目視力2.0に度入りのPCメガネ買えと言っているような物だ。
これが適切な儲け方なのかなぁと甚だ疑問である。